宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
インターネットが数十倍面白くなる
 「アーキテクチャの生態系」

なんとも小難しいタイトルですが、読んでみると、「なるほど!」と何か謎がとかれていくというか、視界が開けていく感じで、とても面白い本です。

扱っているのは、ここ最近、インターネットに登場したおなじみのサービス。

グーグルはもちろん、ブログ、2ちゃんねる、ミクシィ、ウィニー、ニコニコ動画、さらには最近流行りのツイッター、フェースブックまでカバーしています。

そして語られるのはこれらの「使い方」でも「技術」でもなく、感情的な「批評」でもありません。

語られるのは「アーキテクチャ」

「いわゆる構造のことね」なんて早合点してはもったいないです。普通名詞としての「アーキテクチャ」ではなく、米国の憲法学者、ローレンス・レッシグが論じた新しいコンセプト。
規範(慣習)・法律・市場に並ぶ、人の行動や社会秩序を規制(コントロール)するための方法。
日本語訳としては、東浩紀氏が「環境管理型権力」と名づけているそうです。

その特徴は、’ぐ佞旅坩戮硫椎柔を「物理的」に封じてしまうため、ルールや価値観を被規制者の側に内面化させるプロセスを必要としない。
◆,修竜制(者)の存在を気づかせることなく、被規制者が「無意識」のうちに規制を働きかけることが可能。これまた小難しいので、本書で挙げられている例を紹介しましょう。

1つは飲酒運転を規制するものとしての「アルコール検出装置」。みなさんご存知ですか?

私はニュースで見たことがありますが、自動車にアルコール検知機能をつけて、エンジンをかける前には必ず息を吹きいれて、アルコールが含まれていないことが確認されていないとエンジンがかからないものです。確か本人確認は顔を撮影、照合するような仕組みがあったと思います。

これを飲酒運転を規制する法律や、その法律で罪を重くしたり、罰金額を上げるといったことと比べてもらうと、「アーキテクチャ」ということがどういうものかが少しわかるでしょう。

また、マクドナルドなどのファースト・フード店の椅子の堅さ・BGMの大きさ・冷房の強さといった例も挙げられています。椅子が堅ければ、お客さんは長いしないでしょうし、混雑時はBGMの音量を上げたり、冷房を強めて不快指数を上げれば、店の回転率を上げられます。

そういわれてみると、私たちの周りには、さまざまな「アーキテクチャ」、「環境管理型権力」があることに気づくでしょう。 

と、説明がながくなりましたが、この「アーキテクチャ」というところから、インターネットのさまざまなサービスを分析し、そこから「日本」というものの特長も浮き彫りにしようという取り組みを行っています。 まずはグーグルから……
続きを読む >>
| 宇都出雅巳 | 社会学 | 15:18 | comments(0) | - |
このままでは人間がコンピュータの奴隷になる!
情報学的転回―IT社会のゆくえ
情報学的転回―IT社会のゆくえ
西垣 通

コンピュータ、情報、コミュニケーションなどを切り口に、文系と理系の狭間で刺激的な本を出し続けている西垣通・東京大学大学院情報学環教授の“語りおろし”作品。気軽に西垣・情報学に触れることができる本です。

タイトルの「情報学的転回」とは、20世紀に起きた「言語学転回」に続く21世紀の転回として著者は位置づけています。

続きを読む >>
| 宇都出雅巳 | 社会学 | 18:28 | comments(0) | - |
「我慢」とは「現状に抗する力」
乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない
乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない
橋本 治

「勝ち組」「負け組」

こうやって、勝ち負けで分ける言葉はあまり好きではありませんでしたが、世の中では一気にこの言葉がブレイクしました。

「なんか違うな。。」と思うのは私だけではないと思いますが、そういうだけで、「負け組」の遠吠えのようになかなかいいにく世の中になっているのを感じていました。

そんなときに見つけたのが、橋本治さんの最新刊。

勝ち組、負け組という思考法をはじめ、われわれが飲み込まれている資本主義経済を、室町時代・戦国時代などの歴史を引っ張り出したり、わかりやすいような?わかりにくいような文章で、あぶりだしてくれます。

そして、

「経済」とは、ただ「循環すること」である

と言い切ります。

「お金」は単なる経済の一局面でしかない、と。

このあたりは、20年近くも昔に、大学時代に読んだカール・ポランニーの『大転換』などを思い出しますが、多くの人の最大関心事になりつつある「お金」や「経済」について、ふっと冷めた目でみることを許してくれます。

そして、自らのヴァレンタインチョコレートでの経験から、「物」や「お金」とは別に回っているものに注目します。

それは、「生きることが幸福でありたい」という感情です。


この感情こそが経済というものの本質であるというのです。

「人と人との間に感情が循環することによって、幸福な現実が生まれる。それが一人の人間の人格形成に大きく関与する。そしてその人間は、”経済というものは金銭的な損得とは別のものである”というこtも知る」−−こんな素敵な「経済」はないと思います。


後半に入るとわけのわからない部分も多くなりましたが、バブル経済時よりもさらに強く、「お金」が大きな存在を示している今、考えさせられる本でした。

また、印象に残ったのが、タイトルにもしましたが、「我慢」というもののとらえ方。

「我慢」というと、何かネガティヴなものにとられがちになっていると思います。

私がたずさわっているコーチングでも「我慢」というのは、できればやめていくのが常識かもしれません。

この「我慢」を橋本さんは、ポジティヴな見方でとらえなおしてくれました。

「我慢は現状に抗する力である」

我慢というと、ついついネガティヴなこと、なくしたほうがいいこととして考えがちですが、我慢から新しい道、生き方が開ける可能性を改めて知りました。



| 宇都出雅巳 | 社会学 | 22:59 | comments(0) | - |
この対立する世界を突破するには?
あなたへの社会構成主義
あなたへの社会構成主義
ケネス・J.ガーゲン, 東村 知子

私が1年ほど前からはまっているナラティヴ・アプローチ。

今、日本で流行り始めているNLP(神経言語プログラミング)に代わって、家族療法を中心にしたセラピーの分野で注目されている考え方です。

ナラティヴ・アプローチについては、東京学芸大学教授の野口裕二さんが物語としてのケア』でわかりやすく紹介されています。

これまでのセラピスト−クライアントの関係にあった、治す人−治される人という関係そのものを見直す、まさしくパラダイム転換を迫る考え方です。

先日、野口裕二さんとお会いする機会があり、詳しくお話をおうかがいすることができました。まさしく、ナラティヴ・アプローチの考えを体現されている方でした。

本書はその際に、野口さんから紹介された本で、社会構成主義というナラティヴ・アプローチのベースになっている考え方を、一般向けに解説した本です。

翻訳もよくて、ほんと読みやすい本です。かといって、わかりやすいかどうかはわかりません。私たちが当り前に思っている考え方に再考を迫る本だからです。

例えば、セラピーやカウンセリングの大部分に浸透している「医学モデル」。ある人を「病気」とみなすことによって、「治療」という行為を行うモデルです。

しかし、社会構成主義は、これに対して別の可能性を唱えます。もし「病気」と見なさなければ、「治療」以外の行為が動き始めるからです。

少し、本書から引用します。

セラピストの仕事は、人々が報告する問題−抑うつ、暴力、恐怖、無力感など−−の原因を探し出し、それを取り除き、人々を安心させる(治療する)ことです。問題の原因は精神分析ならば「心の深層(抑圧)」に、ロジャース派ならば「自尊心の欠如」に、認知主義の立場ならば「思考の欠陥」にと、さまざまなところに求められます。しかし、いずれにしても、問題は患者あるいはクライアントの心の中にあるとされ、セラピストは専門家としての役割−「中立」を保ち、問題の源を探り、解決に向けて努力する−をただ果たせばよいということになります。

社会構成主義は、医学モデルに立つこのようなセラピーへのアプローチに対して、真正面から挑戦します。なぜ、クライアントは、「問題を抱えている」とみなされなければならないのでしょうか。他にもっとよい道はないのでしょうか。また、それぞれのセラピストは、どういう根拠にもとづいて、「この理解のしかたの方が優れている」などと主張するのでしょうか。本当に中立的なセラピーなど、果たして存在するのでしょうか。


いかがでしょう? ピンときますか?

コーチングでは、「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」という考えをベースにしています。社会構成主義の考えを理解してもらえれば、コーチングにおける考えが、どれだけ大事かがよくわかっていただけるでしょう。

コーチングが一般的になるにつれ、このベースとなる考えがなおざりにされ、質問することや、単に相づちを打って「聴いたふり」をすることまでもがコーチングといわれていますが、私はとても哀しいです。

また、「コーチングとカウンセリングの違いは?」という質問もよくきかれますが、カウンセリング自体が大きく再考をさまられて、ナラティヴ・アプローチのような考えも出ている今では、ほとんど意味がない質問といえます。

コーチングにたずさわる人で、理論的な支えが欲しいと考えている人は、NLP(神経言語プログラミング)や、臨床心理学の理論よりも、まず社会構成主義、もしくはナラティヴ・アプローチを読んでほしいです。

コーチング(特にコーアクティヴ・コーチング)はとても奥深いです。

また、セラピー・カウンセリング、さらにはコーチングの普及に伴って、それに対して「心を商品化する社会」と批判する人々も注目されていますが、その多くが従来型の「医学モデル」に基づくセラピーなどを取り上げて、底の浅い批判をしているのが現実です。ぜひ、社会構成主義、ナラティヴ・アプローチなども踏まえて、論を展開してほしいと思います。

本書はかなり分厚く、私もまだ1回しか読んでいませんが、これから読み込んで、このブログやメルマガで発信していきたいと思います。

いっしょに学んでいきましょう!
| 宇都出雅巳 | 社会学 | 19:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
+ LINKS