宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
<< 「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書) | main | フューチャリスト宣言 (ちくま新書 656) >>
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
ベストセラー『ウェブ進化論』で、グーグルやブログなど、進化するインターネットの世界をわかりやすく紹介した梅田望夫氏。本書はその続編ともいうべきもので、進化したインターネットの世界で、われわれ(特に若者)が「いかに働き、いかに学ぶか」を書いた本です。

実は私は『ウェブ進化論』を買っていません。本屋で立ち読みした程度です。そこに出ていたグーグルやウィキペディアといった言葉を眺めながら、「自分が知っていることだなあ」と思って、買いませんでした。

もともと、ベストセラー本にはあまり手を出したくなくなる傾向があるのですが、特に「ウェブ礼賛論」を批判する西垣通氏の著書『ウェブ社会をどう生きるか』を読んだこともあって、よけいに読んでいませんでした。

本書も本屋で見かけて手にとったものの、買う気はほとんどありませんでした。「ああ、またグーグルの話だなあ」とちょっと小馬鹿にした態度をとりつつ斜め立ち読みをしていましたが、「生きるために水を飲むような読書」という言葉を見つけて少し立ち止まりました。さらに、「群集の叡智を味方につける勉強法」という言葉で、買っておこうという気になりました。



というのも、ちょうど読書法に関する本の執筆をしていて、勉強法については今年はじめに本を出しましたが、相変わらず興味のあるところだったからです。

そして、電車の中で読んでいるうちに、どんどんと引き込まれていきました。読書法、勉強法も「なるほど」と興味深かったのですが、著者の考え方・生き方が、自分自身の考え方・生き方ととても共鳴、オーバーラップするところがあったからです。

ここ最近、人生において踊り場にいる感覚があって、少しエネルギーが低かったのですが、この本を読んで改めて自分の生き方を再確認できて、来年以降の道がグッと明確になった感じです。

こんなふうに人生を変えるというか、輝かせる出会いがあるから、本を探して読むことはやめられません。

ググッときたのは、情報共有への信頼とその可能性

梅田氏はブログに自分自身の考え方を公開し、それに対する反応によって知的生産が生まれる様子を「脳を預けたらそれが膨らんで戻ってくる」と表現しています。この「オープンな知的生産のプロセス」は私自身、ブログではありませんが、メルマガで実感しました。

5年前にメールマガジン、「本当に1ヶ月でCFP試験に合格する!」(現在、廃刊)「コーチングの本質 あなたは考えてはいけません!」(現在は「聴くことの本質」)
というメールマガジンを配信しはじめましたが、それを配信し、読者からの反応に応える中で、自分の中で勉強法(高速大量回転法)や聴き方の技術がまとまっていきました。

そして、その内容を自主制作本にまとめてネット上で販売しはじめ、それに関するセミナーを開催し、それを収録したDVDをまたネット上で販売していました。そして、自主制作本やDVDに対して、また読者・視聴者からの反応があり、さらに勉強法や聴き方の技術は進化していきました。

それがさらには、『速読勉強術』『絶妙な「聞き方」の技術』といった商業出版につながっていき、またそれに対する反応や自分自身の考えの進化から、新たな知的生産が続いているわけです。

ちょっと長くなりましたが、自身の体験から情報共有への信頼とその可能性に対する確信はあり、これからの人生でもさらにやっていこうという決意をすることができたのです。

私が共感したもう一つの点は、梅田氏が「けものみち」と表現している生き方です。
「高く険しい道」は専門志向の自由な生き方、「けものみち」は総合志向の自由な生き方である。
「高く険しい道」は何千人、何万人に一人の可能性だが、「けものみち」はやる気のあるすべての人に開かれた道である。


これだけでは、「けものみち」が何たるかはわからないかもしれませんが、興味のある方はぜひ本書を買って読んでください。

梅田氏はこの「けものみち」を歩み、この私自身も梅田氏ほどの立派な?「けものみち」ではありませんが、同じように歩んできた気がしています。

大学卒業後に入社した出版社は6年で退社、ジャーナリストからコンサルタントへの転身をはかり、システムコンサルティング会社、営業コンサルティング会社を渡り、その後、アメリカのビジネススクールへ留学。そして、外資系銀行に就職するも、2年弱でそこを飛び出し、5年半ほど前に独立。

独立したときに、梅田氏ほどの戦略性はありませんでしたが、試行錯誤を重ねるなかで、今日までサバイブしてきました。

あれあれ、またまた自分の思い出話で長くなってしまいました。
これぐらい、自分自身のこれまでの生き方を振り返らせ、承認を与えてくれる本だったわけです。そして、「これでいいんだ」と確認し、さらに進む勇気を与えてくれました。

と同時に、ここ2年ほどは、情報共有や「けものみち」を歩むという点では生ぬるい毎日を過ごしてきたことに反省させられました。

本書では、オープンソースの分野で活躍する人が何人も紹介されています。その特徴や成功の秘密を探る中で、
「「好きなこと」「やりたいこと」をひたすらやり続けてきた人」「人生をうずめている人」
といったことが浮かび上がってきたといいます。そして、次のように述べています。
リナックスをはじめとする数々のオープンソース・プロジェクトや、ウィキペディアというウェブ2.0初期の成功事例は、ネット上で人々の「善や小さな努力を集積する」という大きな可能性を示している。しかし、そういう営みを成功させるためには、まったく新しいリーダーシップが必要なことをこの十年の経験は指し示しているのではなかろうか。自然状態のネットのパブリック空間は、善悪、清濁、可能性と危険といった社会的矛盾を含む混沌なのだが、その中核に「不特定多数を信頼する」心を持ち「人生をうずめる」ように「好きな」対象に没頭するリーダーが現れたときに、そのリーダーが作り出すコミュニティは公共性・利他性を帯び始めるのだ。
私は『絶妙な「聞き方」の技術』という本を出したときに、この「聞き方」の技術がまるでオープンソースのように、多くの人に共有され、そして進化して広まっていくことを夢見て、本の末尾に次のように書きました。
本書をお読みいただいていかがだったでしょう? 少しでもあなたの「聴き方」の選択肢が広がったのではないでしょうか?もちろん、本書で述べた「聴き方」がすべてではありませんし、万能でもありません。さまざまな「聴き方」の可能性があるでしょう。まずは本書を読むことで、読者のみなさんが自らの「聴き方」を見直すきっかけになればうれしいです。そして、これから皆さんと一緒に、「聴き方」をさらに進化・発展させ、より多くの人と共有できるようになればいいなあと思っています。そのための場として、kikikata.netを立ち上げました。みなさんの実践体験、研究成果を持ち寄り、共有、議論する場になることを願っています。私も一実践者、研究者としてかかわっていきたいと思います。コンピュータの世界では「オープンソース」という考え方が広がっています。有名な例が「Linux」ですが、ソフトウェアの中身を、インターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行なえるようにすることです。「聴き方」という日常生活のOSともいうべき技術についても、オープンソースのように、多くの人が協力しながら発展していくことを願っています。そして、地域、学校、家庭、企業、あらゆる関係、組織などで「聴き方」を学ぶことが、当たり前になり、誰もがよき「聴き手」になれば、社会は大きく変わるのではないでしょうか? あとがきに書いたように、天国になるかもしれません。 Kikikata.net で会いましょう!


しかし、自分自身が「人生をうずめる」ほどの覚悟ができておらず、その証拠にコミュニティの場となること願って開いたkikikata.netへの書き込みを自分自身がほとんどやっていません。また、どこかで、この「聞き方」で少しは稼がせてもらおう、自分のものとして囲い込もうというスケベ心があったと思います。そして、まったくコミュニティとして育っていません。

まだ自分としても、このkikikata,netや「聴き方」をどうするかは決め切れていませんが、まさに本書で梅田氏がいうような形になっていけばいいなあと思っています。

またまた、自分自身の話に引き付けてかいてしまいました。まあ、それぐらい、共鳴するところが多い本なんです。

私が現在実践し、学んでいるコーチングとも重なるというかサポートしあうところがあると感じます。たとえば、次の一節。
「(前略)自分が「好きでやりたいと思うこと」を求める強い衝動がある。個々人がそれぞれ自発的に面白さとやりがいを追求するほうが、金銭動機で達成されること以上の成果を出すのだという確信が、オープンソース・ムーブメントの思想的基盤となっている」


かなり、梅田氏の論に洗脳されている私ですが、以前読んだ西垣通氏の本『ウェブ時代をどう生きるか』に書いてあったような、ウェブ礼賛論の浅さは感じませんでした。「いかに働き、いかに学ぶか」という問題意識で書かれた本書だからかもしれませんが、単なる大量情報に諸手を挙げているのではなく、その中でどう生きていくのかをしっかりと見据えていると思いました。

改めて、西垣氏の本も読んで考えて見たいところです。
| 宇都出雅巳 | - | 23:32 | comments(0) | - |









+ LINKS