宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
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ようやく出た、コーアクティブ・コーチングの一般向け解説書
 世の中にはいろいろな「コーチング」があふれていますが、私がここ9年近く学んで、伝えることもしてきたのは「コーアクティブ・コーチング」というものです。 

これはCTI(Coachi Training Institute)というアメリカにあるコーチ養成機関が提供しているもので、日本ではCTIジャパンが提供しています。

この「コーアクティブ・コーチング」。USを中心にもっともメジャーのコーチングであり、日本でもおそらく数千人の受講生がいますが、あまり知名度はありませんでした。その1つの原因は、コーアクティブ・コーチングの本はこれまで1冊しかでてなかったこと。 

『コーチング・バイブル』(東洋経済新報社)という翻訳本で、第2版は私も翻訳にたずさわりましたが、これ1冊だけだったのです。しかも、この本はなかなか歯ごたえのある本なので、一般の人がすぐに買うというものではありませんでした。

そんな中、ようやく、コーアクティブ・コーチングをベースにした2冊目の本が出ました。それが本書なのです。

コーアクティブ・コーチングをできるだけ日常の仕事の言葉、状況に置き換えつつ、コーチングをリーダーやマネジャーがどのように活用できるかを紹介しています。

読んでもらうと、この本はこれまでのリーダー、マネージャー向けに書かれたコーチング本とは大きく違うことに気付かれるでしょう。 そして、実はその違いは本のタイトルにも現れています。

お分かりになりますか?

 そうです。

「対話力」となっていますね。

多くのコーチング系の本であれば、「質問力」や「部下を動かす」といったタイトルが多いでしょう。
もちろん、本書の中にも、質問や部下のやる気を引き出す話は出てきますが、それが中心ではないのです。あくまでも、リーダーとメンバーとの双方向の「対話」が大事です。なぜなら、「コーアクティブ」コーチングだからです。

「コーアクティブ」とは、「協働的」と訳されますが、もっとベタに言うと、「お互いがアクティブ」であること。「アクティブ」とは「活動的」とか「積極的」という意味ですね。つまり、リーダーもメンバーのどちらも、お互いが「活動的」であり「積極的」であることが大前提になってくるのです。

これは、リーダーが一方的に指示・命令を出して、メンバーがそれに従うというのではないですし、逆に、リーダーがただ質問して、メンバーが答えるというのとも違います。

まさに、「対話」なのです。

その特徴がもっとも出ているのが、本書でいうと「第4章 互いの「ベストアンサー」が最高のパワーを生み出す」

ここでは、コーアクティブ・コーチングの大事なコンセプトの1つである「意図的な協働関係(Designed Alliance)」使って、「関係性をデザインする」ことが紹介されています。

つまり、リーダーとメンバーが、二人の関係が現在どんな状況で、これをどんな関係にしたいのか、一緒になって、意識的に、意図的にデザインしていくのです。これは単なる信頼関係、無意識のラポールといったレベルではありません。

「関係について話せる関係」であり、これによって単なる信頼関係といったレベルよりも深い関係に入っていくことができるのです。

また、本書では、コーアクティブ・コーチングのこれまた肝ともいうべき「3つの指針」もわかりやすい言葉で紹介しています。

この「3つの指針」は、人が本来の輝きを取り戻し、その力を最大限に発揮し、人生を最高に味わうための軸となるもので、コーチングを行ううえでは外せない、とても大事なものです。この3つの指針はそれぞれ「フルフィルメント」「バランス」「プロセス」と呼ばれていますが、読んでおわかりのようにすぐにはピンとこないものです。

それを本書では人が誰もが持っている「3つの願望」として、「生きがいを感じたい」「主体性を持って生きたい」「人生の経験を味わいつくしたい」というように表現しています。

この表現で「3つの指針」が語りつくされているわけではありませんが、とっかかりをつかむうえで、とても役立つと思います。

ところで、本書のメインタイトルは「ベストアンサー」。 この言葉が本書の最初から最後まで貫かれています。

ただ、コーアクティブ・コーチングをよく知る人にとっては、ちょっとピンとこないタイトルであったでしょう。

というのも、よくコーチングの説明で、「答えは相手の中にある」という表現が使われて、相手の中にある答えを引き出すために質問をする、というように言われていますが、コーアクティブ・コーチングはちょっと違うからです。

それについては、以前、私が情報サイト・オールアバウトのガイドを務めていたときに、「焦点を当てるのは「答え」ではなく「力」」という記事を書いているので、そちらを読んでもらいたいのですが、

コーアクティブ・コーチングの姿勢の基本は、「クライアントはもともと完全な存在であり自ら答えを見つける力を持っている(The client is naturally creative, resourceful and whole)」だからです。

ただし、本書をよく読んでみると、「ベストアンサー」というのは、いわゆる「最善の答え」という意味で使われていないことが書いてあります。では、とはどういう意味かというと、

「持てる力を最大限発揮するために、”今、本当はどうしたいのか”に気づき、行動すること」

かなり、たくさんの意味が含まれていますが、大事なのは「答え」ではなく、「力」を最大限発揮することであり、その人本人の「意志」「願い」であり、そして、実際に「行動」することを訴えていると思います。

ぜひ、本書を読まれた人が、メンバーに向かうときに、文字通りの答えとしての「ベストアンサー」を引き出そうとして、答えを探しにいくことがないようにしてください。焦点を当てるべきは、相手の「力」であり、相手の「意志」、「願い」であり、相手の「行動」なのです。

本書のあとがきで著者が最も伝えたかったこととして次のように書かれています。
ビジネスの可能性を広げてくれるベストアンサーは、外にあるのではなく、自分自身の中にある。リーダーの務めは、このベストアンサーをメンバーから引き出すことである。そうすることによってメンバーのやる気は高まり、チームは活性化していく。その結果、「目標を達成する」「問題が解決する」といった望ましい成果が出せるようになり、チームはいちだんと成長していく。
ここでの「ベストアンサー」も「答え」ではなく、「力」「意志」「願い」「行動」と読んでもらったらいいと思うのですが、ここで、さらに「引き出す」とあるのを、相手との「対話」の中で相手が「発見」するというように読んでもらったらいいのでは、と感じました。

というのも、「ベストアンサー」は相手本人の「外」にあるのではありません。かといって、その人の「中」にあるわけではないと思うからです。

強いていえば、リーダーとの対話の中で、メンバーとリーダーの「間」、もしくはメンバーが行動をして周囲の人や環境とやりとりするその「間」に生まれて「発見」するのではないでしょうか?

コーチングはここ10年ほどの間に、日本ではリーダーやマネジャーのコミュニケーションスキルの1つとして知られ、かなり定着してきました。

しかし、単なる質問力や、答えを引き出す方法、さらには相手を動かす方法として伝わり、それが持つ本来の力を十分に発揮できておらず、結果として、リーダー、マネジャー、メンバーそれぞれの力が十分に発揮するようになっていないように思います。

本書をきっかけに、コーアクティブ・コーチングというコーチングが多くの人に伝わって、人が持てる力を最大限発揮して、素晴らしい人生を送る人が増えることを願っています。
| 宇都出雅巳 | コーチング | 18:34 | comments(0) | - |
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