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リーダーはコーチングを使うより、まず自分がコーチングを受けよう!
 昨日のブログで紹介した『コーチングのプロが教えるリーダーの対話力−−ベストアンサー』。これは、組織のリーダーがチームの活性化のために、コーチングを「使う」ことを勧めるものでした。

そして今日紹介する本は、組織のリーダーがリーダーたるためには、コーチングを「受ける」ことを勧めるものです。

正確にいうと、本書でコーチングを受けることを明確に勧めていません。ただ、本書ではリーダーはまず自らのビジョンを確立することを勧めており、そのためには私は、コーチングを受けることがおそらくベストな方法だと思うからです。

リーダーがコーチングを使うのか、コーチングを受けるのか?

『ベストアンサー』と同じ時期にこの本が出たのは、何か象徴的だなあと感じます。

もともと、コーチングが日本に入ってきたのは、リーダーやマネージャーのスキルとしてでした。これまでの指示・命令スタイルではなく、部下自らに考えてもらうスタイルに移行するためのスキルとして入ってきたのです。

一方、アメリカなどでは、企業経営者や経営幹部のサポートとして、コーチをつけるという形、つまり「エグゼクティブ・コーチ」として普及していました。

日本は、コーチングを「使う」という形であったのに対し、アメリカではコーチングを「受ける」という形が主流だったわけです。おそらく、日米の経営スタイルの違いなどが影響したこともあるでしょう。

そして、最近この流れが曲がり角というか、変化が必要な時期にきていると思うのです。そして、その変化の方向を、本書と『ベストアンサー』が示していると思います。

それは具体的にはどんな方向かというと……

一つは、コーチングを「使う」という流れで、部下をはじめとする相手を「操作」「コントロール」するスキルとしてコーチングが変質してしまったのに対し、それを本来のコーチングに戻そうという方向です。

具体的に言えば、『ベストアンサー』のところで紹介したように、「関係をデザインする」「本来の力の発揮を支援する」といった方向です。

もう一つは、コーチングを「受ける」という流れで、「目標達成支援」や「お悩み相談」という短期的な課題中心でマネジメントのアウトソーシング的なものに限られていたのに対し、「リーダーシップ開発」に象徴されるような「人としての成長」という、これまた本来のコーチングに戻そうという方向です。

その具体的な例が、本書で詳しく解説されている「自らのビジョンを創り上げる」ことです。

これまでもさまざまな本で「ビジョン」の重要性は言われてきましたが、本書は「ビジョン」を創り上げるための明快なフレームワークと具体的手順を解説しているのが特徴です。いくつか、本書のポイントを紹介してみましょう。

1つはビジョンを創り上げる際のフレームワーク・「Will・Can・Must」です。

この「Will・Can・Must」の3つの視点自体はおそらくおなじみのものだと思います。

Will :「やりたいこと」 ・  Can:「やれること」 ・  Must「やるべきこと」

目標設定やキャリア開発において、この3つの視点で考え、この3つが重なるところを発見したり、重なる部分を大きくすることが重要だと学んだ人も多いでしょう。

では、本書は何が違うのか?

それは、この3つを並列に考えるのではなく

一番上がWill :「やりたいこと」 
二番目がCan:「やれること」
三番目がMust「やるべきこと」

「ピラミッド構造」にしたところです。

これでとてもビジョンというものが考えやすくなるのです。

通常、日々の仕事の中では、Mustから考えて、そのためのCanを考えがちになります。Willにはいかずに、MustとCanの中で完結してしまうのです。
多くの企業人は、組織マネジメントの特性から、どうしてもMustから仕事を始めることが多くなる。コッター氏が述べたとおり、複雑性を圧縮するためにマネジメントは定量化された目標を課すことになり、それが個人ベースのMustとなる。そのためCanについても、Mustをこなすための能力開発の結果として構築されるケースが多くなる。(中略)
こうした経験を重ねていくと、Willを考える機会からどんどん遠ざかっていく。そして、会社の仕事とやりたいことを線引きするようになる。しかし、そうした人に限って、やりたいことが表面的なものであったりする。
あなたやあなたの周りの人の仕事、毎日を振り返ってみると思い当たるのではないでしょうか?

そして、本書の著者・北垣さんが提唱するのはWillから考えていくことです。
使命感を帯びたビジョンを構築するためには、,泙Willがあり、△修亮存修里燭瓩某觜塲塾呂Canを磨き、4超からの要請であるMustに応えていく、というプロセスが不可欠となる。こうしたプロセスを辿って環境からのフィードバックを得ることにより、さらにWillを強化していく。この循環がビジョンを強化し、使命感のレベルへと昇華していく。

このモデルを見ると、いかにリーダーに「Will」を中心に問うていくコーチングが重要であることがわかるでしょう。

私はここ数年、企業からのコーチングの依頼があったときには、「コーチングとはリーダーシップ開発」であるという位置づけを説明してきました。その際には、コーアクティブ・コーチングの「小さな主題」と「大きな主題」、「大きな主題」としての「3つの指針」を使ってきましたが、本書の「Will・Can・Must」のピラミッドモデルを使うことで、コーチングの意味をよりよく理解してもらえるように思います。

また、本書では、「Will」を発掘し、ビジョンを創り上げる具体的な手順として、

 現在の自分について考える
 過去の自分と向き合う
 未来の自分からのメッセージを受け取る


を挙げています。コーチングをしている人であれば、これがコーチングでカバーできることはお分かりになるでしょう。 

もちろん、これまでに、ビジョンを考える1日研修や泊り込み研修などもあり、現在もたくさん行われているとは思います。それは、非日常の中で日頃の枠から外れやすかったり、集団の力、グループダイナミクスによって、大きなインパクトはもたらせるかもしれません。ただ、仕事から離れた非日常の空間で行われるため現実と遊離しがちだったり、場の勢いに流されてしまうこともあります。

それに対して、現実の仕事に半分足を突っ込んだ状態で、1対1で継続的に続けていくコーチングは大きな可能性があると思います。コーチング研修を行うのではなく、コーチングを行いたい、そのために企業などにコーチングの位置づけ、意味をしっかりと説明したいという人に、本書は大きな助けとなるでしょう。

そのほか、本書の最終章は「エンパワーメント」に当てられていますが、これはリーダーがコーチング「使う」際にとても役立つと思います。

エンパワーメントはコーチングとの関連で紹介されることが多いですが、あまり詳しく丁寧に解説されることは少なかったように思います。本書では、ビジョンを創り上げたリーダーが行うマネジメントという位置づけをしているほか、エンパワーメントを「what型」「How型」の二種類にわけたり、エンパワーメントのプロセスを紹介しているので、より実践しやすいでしょう。

コーチングを「受ける」ことの意味は、日本では「使う」ことが先行したこともあって、あまり深められていないように思います。本書の「Will Can Must」モデルは、コーチングを受けることの意味をいろいろ考えていくとっかかりになるでしょう。

さらに、NLPユニバーシティのロバート・ディルツさんが開発した「ニューロロジカルレベル」や金持ち父さんなどで使われている「Be→Do→Haveモデル」などと関連づけたり、組み合わせることもできるでしょう。

また、本書では「Will」を中心にした手順が解説されていますが、「Can」「Must」についても、簡単なものではなく、ここの手順も考える必要が出てくるでしょう。

たとえば、「CAN」ののところは、学習にかかわるところであり、コーチングもこれをサポートするこができます。ただ、その際に、先日、このブログで紹介した『人材開発マネジメントブック』にも書かれているように、いわゆるスキルだけでなく、意識の使い方というか、見方・聞き方・感じ方というようなメタレベルのスキルに注目する必要があるでしょう。

「MUST」のところも、自明のようでいて、企業のマーケティング活動などを考えてみれば、どこまで周囲(顧客)の要請をわかっているのかというと簡単ではなく、マーケティング的視点が必要でしょう。その1つとしては、このブログで紹介した『白いネコは何をくれた』の軸となっている「戦略BASICS」が相性がいいように思います。

といったようにこれから面白い展開が考えられそうです、

なお、最初のところで「『ベストアンサー』と同じ時期にこの本が出たのは、何か象徴的だなあと感じます」と書きましたが、それは、二つの本を書いた著者から感じたことでもあります。

というのも、本書の著者の北垣武文さんは、今から8年前にコーアクティブ・コーチングの応用コースを私と一緒に卒業した同期であり、『ベストアンサー』の著者の一人である渡邊有貴さんは、当時、北垣さんが在籍していた慶應義塾大学のビジネススクールに在籍していて、北垣さんの紹介で初めてお会いしたという経緯があったらからです。

三人一緒にコーチングについて議論したことはないのですが、それぞれとコーチングについてかなり話しこんだので、期せずして同じような時期に本を出版されたのは私にとって感慨深いものでした。

この2冊の本から、さらにコーチングがより深く理解され、普及していくことを強く願っています。

| 宇都出雅巳 | コーチング | 01:29 | comments(0) | - |
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