宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
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「じぶん探し」しなくても、じぶんは確かにここにいる
 アンチ・勝間和代というポジショニングで、『しがみつかない生き方』などがベストセラーになっている精神科医の香山リカさん。

 本屋では昔の著作も平積みしてあり、本書はその中で読んでみた一冊です。 出版されたのは1999年6月。今から10年以上前になります。

 私は『しがみつなかない生き方』は読んでいませんが、おそらく、この本で主張されていることと基本は変わらず一緒なんだろうなあと思います。 本書から少し引用しますが、まさに「しがみつかない生き方」、「勝間和代になろうとしない生き方」を提唱しているといえるでしょう。
人から注目されていようといまいと、自分で強く意識していようといまいと、私は私。そしてそういう私は世界でたったひとり、ここにしかない。それだけだった、十分にすばらしいことじゃないの……。
 ぼんやりとそう思いながら、いつも自分にゆるやかな愛を注ぐ。そしてそういう私だから、親も恋人も友だちも、きっと大切に思ってくれる。温泉に入って「あー、この世の天国だぁ」とにんまりしているようなそんな状態で、いつもいられればいいとは思いませんか。

おそらく、香山さんは「勝間和代になろう」というのを、「じぶん探し」の1つの形だと思っているのでしょう。本書の言葉でいうと、自己愛的な「誇大自己探し」です。どういうことかというと……
 「自己愛」とはナルシシズムとも言われたりしますが、文字通り、じぶんでじぶんを愛するということです。フロイトは、この自己愛のはじまりを、「じぶんは世界の中心であり、なんでもできる」と感じている赤ん坊のときに求めました。

そこからアメリカの心理学者コフートが、この赤ん坊のときの「わたし」、つまり「私は完璧、のぞめばなんでもできる。世界一ステキな私」を「誇大自己」と名づけました。自己愛的な誇大自己探しとは、この誇大自己を大人になっても手放せずに探し続けてしまうことなわけです。

じぶんの誇大自己が形になったものと勝間和代さんがとらえられ、「じぶん探し」のニーズ・願望にこたえていると見ることもできるでしょう。

ただ、この「誇大自己」。見るからに、なんとも異常で厄介な自己のようですが、人が生きたり、成長していくうえで大事なことだともいえます。香山さん自身、本書のなかで次のようにも言っています。
「等身大の自己を作らずに誇大自己のまま生きる」というのは、現代人のひとつの”生活の知恵”だとさえ考えられます。
コーチングにしても、「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力をもっている(Client is naturally creative, resourceful and the whole)」という前提でかかわっていきますから、ある意味、誇大自己を思い出してもらう場を創っているともいえるでしょう。

しかし、一方で誇大自己だけでは実際には生きていけません。それだけで生きていこうとすると、常に新たな誇大自己を探し続けなければいけません。少しでも現実に向き合い、誇大自己を失いそうになったら、「これは本当の私じゃなかった」「ここではなかった」といって、その場を離れ、また新たな場、対象を探し続けることになります。

こうならないために必要なのが「等身大の自己」。香山さんは等身大の自己イメージは次のようにすれば手に入るといいます。それは何もむずかしいことではなく、「失敗したり挫折したりするのも自分、まだできることだってある」と認めたり、ときには「綺麗、綺麗」と軽く自分をほめたりしていけば、いつのまにか手に入るはずなのです。コーチングは日々の「行動と学習」(Foward & Deepen)を通して、この等身大の自己を育てているともいえます。

大事なのは、この「誇大自己」と「等身大の自己」を両方扱っていくことなのでしょう。

誇大自己ばかりになってしまっては、現実との接点が得られず、ただ誇大自己探しに終わって、何もなしとげることができなくなってしまう。 そして、「すばらしいわたしなんていない」と傷ついて、何かの「病」を選んで、「ほかの人とは違う特別な私なんだ」というのだけでも満たそうとするかもしれません。

本書では、そんな対象となる「病」として、「多重人格」や「アダルト・チルドレン」「ストーカー」「拒食症」などを挙げています。いまでいえば、「アスペルガー症候群」などもその1つかもしれません。

また、等身大の自己ばかりになってしまっては、成長しよう、変容しようという人間という生物が持っている動きを生かせずに、押し殺してしまうかもしれません。

誇大自己、等身大の自己。どちらも大事です。

「勝間和代」さんの本を読んで、一時的に誇大自己を満足させるだけでなく、自ら行動、実践しながら
等身大の自己を育てていくことです。

どちらかに偏ることなく、どちらも視野、意識において生きていく、人にかかわっていくことが必要なのでしょう。

コーチングにおいても、またセミナーやワークショップにおいても、頭にいれておきたいことです。
| 宇都出雅巳 | - | 13:53 | comments(0) | - |
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