宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
<< 読書は創造的プロセスです | main | じぶんの答えのつくりかた >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
原発事故はなぜくりかえすのか
JUGEMテーマ:読書

毎日、福島第一原発のニュースが報じられています。

「原発というのはこういう仕組みなのか」と、私も含めて初めて知った方も多いでしょう。

今回の原発事故の原因は、地震だけでなく想定外の大津波が襲って、電源が喪失したことだとされています。

いまこの瞬間も原発現場で必死の努力が続けられている段階で、また、今後の原発がどうなるかもわからない中、気が早い話ですが、今回の事故の分析から、今後さらなる安全対策が行われるでしょう。

非常用の発電機を高台に移す、バックアップ用にもう一台設置する、バッテリーをもっと増やすなど……。

そして、原発を推進・管理してきた東京電力や国への責任追及も行われるでしょう。

しかし、それで将来の事故が防げるのか? 

本書は今から10年以上前、1999年9月に茨城県東海村のJCO社・ウラン加工施設で起きた事故、それを受けての分析・対策を受けて、書かれたものです。

著者は「市民科学者」として反原発・脱原発運動のリーダーであった高木仁三郎さん。このブログでは、『市民科学者として生きる』という本を以前、紹介しました。
 → http://utsude.jugem.cc/?eid=101

本書は「原発事故はなぜくりかえすのか」という問いのもと、原発の安全について考えた本です。

しかし、今、報道でよく出てくるような冷却システムや非常用電源などの話といった原発の具体的な構造や仕組みなどは書かれていません。

原発の歴史、それを取り巻く組織・環境、技術に内在する思想に踏み込んで語っています。

そして高木さんがたどりついたのが、「パッシビズム」という考えです。
技術的な極致はパッシビズということだと私は思うのです。つまり、ことさらに外から何か巨大なシステムや大動力を導入したり、あるいは人為的な介入をやって危篤状態を乗り切ろうとしている限りにおいては、いくら安全第一をモットーとしても、やはり人間のすることですから、うまく働かなければ人為ミスが起こって必ず事故につながるので、大事故の可能性は残ってしまいます。あらゆる場合に自然の法則やおのずと働いているさまざまな原理によって、人為的な介入がなくても、事故がおさまるようなシステム、これを基本に置いた設計がなされるべきでしょう。重力によって水が高いところから低いところに流れるとか、最も高いところから低いところに伝わるとか、そういった自然法則に十分に依拠したようなシステム、これは私はある人の考えを借りてパッシビズムの技術と読んでいますけれども、それならばうまくいくかもしれないと思うのです。
現在の福島第一原発の状況をみると、本当にそうだなあとうなづかされます。

「今さら言われても……」「もう遅い……」「今はまず火消ししないと」と思われるでしょうが、忘れないうちに本書を紹介しておきます。

今、原発現場では、先日の東京消防庁の記者会見にもあったように、命をかけた活動が行われています。

本書も、高木さんが死の直前に、がんとの闘病の苦しい中、口述筆記されたものです。

その努力を無にせずに、生かすためにも、表面的な安全対策、責任追及に終わらずに、本書も参考に深く考えていきたいです。
| 宇都出雅巳 | 高木仁三郎 | 11:56 | comments(5) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 11:56 | - | - |
 宇都出様にご紹介いただいた原子力資料情報室のHPを覘かせていただいきました。なぜか「高木仁三郎の部屋」にあった高木博士の柔和な笑顔が頭に浮かび、年のせいか涙腺の緩くなった私には文字が滲んで暫し読み進めなくなりました。

 涙腺といえば宇都出様もプロフィールで尊敬する人として田中正造先生を掲げられておりますが、私の幼年期の記憶として、母方の祖父がその名を口にする度に眼に涙を溜めていた事を思い出しました。

 宇都出様が他に選ばれた方も吉田松陰先生、中岡慎太郎先生と、公があって私がなく、また逆境を気にもしないかのような桁外れの精神力と尋常ではない行動力を併せ持つ方々を選ばれているように思いました。
 しかしなぜ石川さんがいて才谷さんがいないのかなど気になるところもあり、いつかそのへんのご事情をブログにて読ませていただければ幸甚です。
 ご多忙のところリプライを頂戴し、誠にありがとうございました。
| カキ | 2011/04/01 9:29 PM |
カキさま

コメントありがとうございます。

確かにすぐれた本ですね。

章タイトルを挙げると……

 1:議論なし、批判なし、思想なし

 2:押しつけられた運命共同体

 3:放射能を知らない原子力屋さん

 4:個人の中にみる「公」のなさ

 5:自己検証のなさ

 6:隠蔽から改ざんへ

 7:技術者像の変貌

 8:技術の向かうべきところ


今回の事故における東電の対応、原子力保安院の会見、テレビに出てくる学者さんの解説などを見ていると、本書の内容の実例を見せられるようで「こういうことか」とよくわかります。

高木さんがご存命だったら……と思いますね。

ここ2週間は高木さんの顔がよく浮かんできます。

高木さんが創設された原子力資料情報室も、独自の視点から情報発信をして、かなりの注目を集めていますし、ますます高木さんが成し遂げられたことのすごさがしみてきます。

ほんと「いい仕事」をされました。
| 宇都出雅巳 | 2011/03/30 11:57 PM |
hiro8866さん

 コメントありがとうございます。

 ちょっと、私が引用したところから、高木さんがパッシビズムに従えば、原発も安全になると考えていたような誤解が生まれたかもしれません。

 引用した直後の文章をさらに引用しておきます。

 「原発は自然の法則に逆らったシステムの典型みたいなものですが、それに対するパッシビズムの極致というのは、自然の法則にもっと従ったシステム、たとえば太陽熱のように基本的に循環の中でエネルギーを賄っていくようなシステムです。そういうシステムへと全体が移行していくようになれば、安全の問題にも解決が望めるように思います。いま我われをとりまいている安全の懸念は、パッシビズムの方向に解消していくのではないでしょうか。」

 なお、本書では原子力が国家主導、政治主導で始まったと書かれています。企業は積極的ではなかったということです。(そういう意味では東電も押し付けられた立場ともいえるかもしれません)

 「たとえば原子力事故が起こった場合の損害賠償の大きさであるとか、責任であるとかについて、直観的にピンとくるわけですから、日本の伝統的な技術産業というのは、積極的に手を出さなかった部分もあるのです。」(本書より)

オール電化。確かに便利ですが、停電になるとこれは大変ですね。
| 宇都出雅巳 | 2011/03/30 11:50 PM |
 昨年たまたま書店で見つけ、タイトルが気になり、分野は違えど技術者の端くれとして読んでおくべきだと購入して読んでおりました。金言と思える内容ばかりだったと記憶しております。
 ここ数日、報道での解説も玉石混合に感じます。こうした状況を見るにつけ、高木さんがご存命であったならどれ程的確なアドバイスをくださったかと思うと残念でなりません。
| カキ | 2011/03/26 5:44 PM |
原子力発電はいかに安全策をとっても、危ないものであることには変わりないと思います。なぜこれほど依存するのでしょう?
話が脱線しますが、
最近流行のオール電化なるものはやめることが肝心だと思います。
| hiro8866 | 2011/03/22 5:20 PM |









http://utsude.jugem.cc/trackback/202
+ LINKS