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われわれは「フィルターバブル」の泡の一つ一つ:『閉じこもるインターネット』
邦訳タイトルの『閉じこもるインターネット』

図書館の新着リストを眺めていたときに、引っかかりました。

「インターネット」というと「開いた」というイメージが浮かびますが、そこに「閉じこもる」という逆の言葉。

「どういう内容なんだろう?」と興味を持って、予約して読んでみました。

なお、邦訳のサブタイトルは「グーグル・パーソナライズ・民主主義」

これでも何のことかわかりませんね。

あまり期待していませんでしたが、とても興味引かれる内容でした。

その中のキーワードは、

 「フィルターバブル」、そして「パーソナライゼーション」

「フィルターバブル」はさておき、「パーソナライゼーション」は聞いたことがある人が多いでしょう。強いて訳せば、「個人化」となるでしょうか。

おなじみなのが、アマゾンのページですね。ずらりと、あなたへのお勧め商品が並んでいるでしょう。もちろん、これは「あなた」という個人に対して、その購入履歴やクリック履歴から「パーソナライズ」されたページです。

この一見、便利にみえる「パーソナライゼーション」について、グーグルやフェイスブック、ツイッターという身近な道具と化しているサービスにおける「パーソナライゼーション」の具体例を挙げながら、その危険性を解説しています。

たとえば、「はじめに」の冒頭で掲げられている話は、まずかなり衝撃的でした。(知っている人にとっては常識かもしれませんが。。)
それは、「パーソナライズされた検索」

つまり、グーグルで検索するとその検索結果までもが「パーソナライズ」されているというのです。同じ言葉を検索しても、人によって(正確には使っているパソコンによって)、表示結果が違うというわけです。

これって、ちょっとびっくりではないでしょうか?

こちらは「まあそうでしょ」と思うかもしれませんが、グーグルニュース。これに表示されるニュースも個人ごとに違うニュースが表示されるというのです。

新聞ではトップニュースに取り上げられるニュースが違ったり、その取り上げ方が、新聞ごとで違うのはよく知られてはいると思いますが、グーグルニュースでは、グーグルニュースという色があるのではなく、見る人ごとにその人の好みのニュースを表示するのです。

毎日、朝日新聞を読んでいる人と、読売新聞を読んでいる人は、今世の中で起きていることやその見方に違いが出るでしょう。赤旗、聖教新聞などを例に挙げれば、もっとわかりやすいかもしれません。

それと同じといっていいかわかりませんが、知らず知らずのうちに、自分の考えに影響、バイアスをかけられるようなことが起こっているのです。

さらには、今、急速に日本でも普及しているフェイスブック。

このフェイスブックには「ニュースフィード」という、「友達」として承認した人が更新した情報がツイッターのように表示される機能があります。これ自体が「パーソナライズ」された情報ではありますが、実はその表示はそのまま表示されているのではありません。膨大な情報がやり取りされているため、どの「友達」のどんな情報を表示するかにも「パーソナライズ」が行われているのです。

「エッジランク」という仕組みが導入されていて、やりとりが多い「友達」の更新情報ほどニュースフィードに登場する確率を高くするといった形で、フィルターがかけられているのです。

あなたはここまで「パーソナライズ」されていると知っていたでしょうか?

そして、こうなることで、確かに便利というか、心地よいとは思いながらも、なんだか余計なお世話をされているような、そして、自分がどんどん狭い世界の中に閉じこもっているような気がしてきませんか?

そう。それで「閉じこもるインターネット」なわけです。

それが、先ほど紹介した言葉、「フィルターバブル」。この本の原題でもあります。

なお、「バブル」というと、ついつい「バブル景気」の「バブル」をイメージするかもしれませんが、ここではそうではありません。

上に書いたような「パーソナライズ」というフィルターによって作られる世界を表しているのです。

以下の文章が、著者が「フィルターバブル」を定義しているものです。
「新しいインターネットの中核をなす基本コードはとてもシンプルだ。フィルターをインターネットにしかけ、あなたが好んでいるらしいもの――あなたが実際にしたことやあなたのような人が好きなこと――を観察し、それをもとに推測する。これがいわゆる予測エンジンで、あなたがどういう人でなにをしようとしているのか、また、次に何を望んでいるのかを常に推測し、推測のまちがいを修正して精度を高めてゆく。このようなエンジンに囲まれると、我々はひとりずつ、自分だけの情報宇宙に包まれることになる。わたしはこれをフィルターバブルと呼ぶが、その登場により、我々がアイデアや情報と遭遇する形は根底から変化した。」


ここから、著者は今までになかった3種類の問題に直面するとしています。

    ひとりずつ孤立しているという問題
    フィルターバブルは見えないという問題
    そこに入ることを我々が選んだわけではないという問題

確かに気持ちわるいですし、この「フィルター」によって企業がわれわれを知らず知らずのうちに操作する危険性もあります。

ただ、私などはこの「パーソナライゼーション」や「フィルター」が何か特別なもので、特別、危険視するようなものではないと思ってしまいます。

著者も書いていますが、「我々は昔から、自分の興味関心や仕事とかかわりが深いメディアを重視し、その他を無視する傾向にあった」わけです。また、人は自分の持つ信念・思い込みによって、認識をゆがめ、ますます偏った信念・思い込みを信じる傾向にあります。人というものはもともと「フィルター」を持ち、それをかけて自分の世界を作っているのです。

そして、こういった傾向にあることは、頭でわかっていても、それを自覚して生きている人はほとんどいないでしょう。それが自分の世界になるからです。

そもそも客観的な世界などなく、各個人がフィルターをかけた主観的な世界しかないのです。

公正中立と思い込んでいるものでも、ほんとうに公正中立なものなどありません。これまではむしろ、「世間」とか「常識」というもので、きわめて強い「フィルター」がかけられた世界を押し付けられていたわけで、フィルターバブルはこれまでも存在し、それを自覚し、そこから抜け出すことも難しかったといえるでしょう。

今インターネットで起きている「パーソナライゼーション」は、本書が書かれてこうして読まれていること自体が示すように、これまでも存在していた「フィルター」「フィルターバブル」を自覚し、それを手放したり、選択したりすることも可能にすると思います。

「世間」や「常識」、そして「私の世界」も含めて、それがいかに一部であり、その外には大きな世界が広がっていることがわかるでしょう。

もっともっとパーソナライゼーションが進んで、もっともっと個々で違ってきたら面白いと思います。

そうすれば、個々の「フィルターバブル」自体が共有したり、交換したりする対象となってくるでしょう。

なんて書きながら、自分も含め、周りの人それぞれが、独自の世界を作っている「フィルターバブル」に思えてきました。

われわれは「フィルターバブル」の泡の一つ一つなんです。


だから、違っているんだし、何かを共有したり、コミュニケーションすることがほんと大変なんだと。そして、そんな「フィルターバブル」同士がかかわりあうのは、とてつもなくエキサイティングで、刺激的な体験なんだと。

そして、ロボットや人工知能を設計・制作することから、人というものが少しずつ分かり始めているように、インターネットを通しても、人というものがわかりはじめてきているように思います。
| 宇都出雅巳 | インターネット | 14:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
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