宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
<< 満州移民−−飯田下伊那からのメッセージ | main | 今日は大河ドラマ最終回・経営者・平清盛の失敗 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
『触感をつくる』(岩波科学ライブラリー)
まず、 タイトルの言葉に注目してください。

「触覚」ではなく「触感」です。

単なる「触覚」だけではなく、「触にまつわる主観的な質感(クオリア)」として「触感」に焦点を当てています。

確かにほかの「視覚」や「聴覚」などは、それぞれが単独で存在し、ほかの感覚からの影響はほとんど受けないといえます。

しかし、何かに触れた時の「触感」は、単なる指先の「触覚」だけでなく、対象の見た目や触れた指を動かすときの音などで変化します。

まさに、「触覚」ではなく「触感」です。

そして、この「触感」。ほかの感覚にくらべて捉えにくいものです。

なぜなら、「包括的なイメージの総体として感じられるからであり、主観的な体験でもあるから」です。

本書はこの捉えにくい「触感」について、最新の研究成果を次々と紹介しながら迫っていきます。

本書を読み進めていくと、「触感」というぼんやりしたものが、だんだんととらえられ、その「触感」(つまり、触感の触感)を強く感じられる気がしてきます。

身体や身体感覚の大事さはよく言われることですが、そこにはまさにこの「触感」が強く絡んできます。

ぜひ、この本で「触感」に触れてもらいたいです。

それでは、いくつか、本書の中で面白いなあと「ググっ」と感じた話を紹介しましょう。
まずは「重み」と「重」要さとの関係。

 ある実験では、実験参加者に、履歴書を見て相手を評価する面接官の役をしてもらいました。

 その際に、履歴書をのせるクリップボードが二種類用意されました。

 340グラムと2041グラムのものです。重さが6倍です。

 さて、重いクリップボードを使うことでどんな変化があったでしょう?

 なんと、面接官である実験参加者は、応募者をより重要な人物とみなすようになったのです。

 そして、参加者自身も重要な仕事を任されていると思うようになったというのです。

 言われてみれば、「重要」という言葉にも「重」いという表現が入っていますが、
 言動が軽い・重いや、重みのある発言なんていう表現がありますよね。

 なんとも「重さ」、恐るべしです。

次は裸足で走ることが実は膝や腰にいいという話。

ベアフットランニングというそうなんですが、そのランニングでは、薄っぺらな足袋のような特殊な靴で走るそうです。

それだと、着地の衝撃で膝や腰がやられそうですが、実は、そうではないというのです。

足裏から触感が敏感に感じ取れるため、自然と膝や腰に衝撃のかからない走り方になるのです。

分厚い靴で身体を保護しようというのではなく、逆に、感覚を敏感にして、無意識的なヒトの特性を引き出すことで身体を保護しようというわけです。

裸足のランナー・アベベ(ちょっと古いですが)も、実は非常に合理的だったともいえるかもしれません。

3つめは目のコンタクトレンズではなく「触覚コンタクトレンズ」

これは「通常ではほとんど気づくことんができないわずかな表面のデコボコを、テコの原理で増幅して指先に伝える素子」です。

 この開発のきっかけがとてもおもしろいのですが、工場で加工品の表面の出来を検査する職人さんが、素手ではなく軍手をはめて作業を行なっていたということなんです。

 素手のほうが敏感に察知しやすそうに思いますが、軍手のほうが細かなデコボコがわかるんですよね。 そこから開発がスタートして生まれたもので、約10ミクロン、髪の毛の10分の1ほどのデコボコも簡単に検出できるそうです。

 これによって、熟練工が「キズがある」という場所は、経験の浅い人が触れてもわからないんですが、この触覚コンタクトレンズを使えば実感できるのです。

 そこで、さらにおもしろいというか、人間の触感の不思議なところなんですが、触覚コンタクトレンズで凸凹を実感できた後は、この触覚コンタクトレンズがなくても、容易に気づくことができるそうなんです。

 人間の触感というのは、ほんとすごいものです。

最後のエピソードはコンピュータ操作に使う「マウス」に、視覚情報によって重い・軽いの触感を与えるというアイデアです。

 普段使っているマウスでモニタ上のマウスポインタを動かす際、マウスポインタが移動する視覚情報を意図的に速める・遅くすることによって、手に持っているマウスが軽く感じられたり、重く感じられるようになるということです。

 確かに、今、この文章を書いているパソコンで、マウスポインタの移動が速くなる、遅くなるを意図的に想像してみたところ、触感では軽い・重いという感覚になりました。

 パントマイムなんかを見ていても、その動作の速さ・遅さから、重さや軽さが伝わってくる感じがありますが、これも同じメカニズムなんでしょうね。

 さて、いくつか、本書の中にある実験、エピソードを紹介しましたが、いかがでしょう?

 けっこうおもしろそうでしょう?

 この本との距離が近く感じられたかもしれません。

 これも触感の一つですね。

 あなたの感性を豊かにしてくれる本ですよ!
| 宇都出雅巳 | | 21:46 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 21:46 | - | - |









http://utsude.jugem.cc/trackback/232
+ LINKS