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「予測する」ことから人は逃れられない
考える脳 考えるコンピューター
考える脳 考えるコンピューター
ジェフ・ホーキンス, サンドラ・ブレイクスリー, 伊藤 文英

「予測をたてる能力こそが、知能の本質」

著者は従来の人工知能・ニューラルネットワーク研究を批判しつつ、ズバリ言い切っています。

この本のキーワードは「予測」です。

確かに人間は常に「予測」して行動しています。しかし、著者がいう「予測」はわれわれが思い浮かべるような行動レベルや能力レベルのことではありません。著書が本書で展開しているのは、見る・聞く・触れるといった認識レベルにおける「予測」なのです。

「人間の脳は蓄積した記憶を使って、見たり、聞いたり、触れたりするものすべてを、絶えず予測しているのだ」
「人間の認識は、感覚と、脳の記憶から引き出された予測が組み合わさったものなのだ」


著書はその理論の核心である「記憶による予測の枠組み」を用いて、人間の持つすぐれた認識力の謎を解き明かしていきます。特に脳の中の「新皮質」に焦点を当て、「階層構造」と「逆向きに流れる情報」といった要素を用いながら、わかりやすく仕組みを説明しています。

その仕組みから、無意識に行ってきた見る・聞く・触れるについて、深く考えさせられるほか、創造性開発のヒントも得ることができます。

しかし、著者も少し触れていますが、脳が自然に行っている「記憶による予測」は、言ってみれば「固定観念の判断」とほぼ同じことです。脳の固定観念・思い込みのワナにはまらないためにも、意識的に懐疑的態度を取り、無邪気な好奇心を持つことの重要性も痛感させられます。

主著者はPalmの生みの親、ジェフ・ホーキンス。そこに『脳の中の幽霊』(角川書店)の著者でもある科学ライター、サンドラ・ブレイクスリーが加わり、とても読みやすい本に仕上がっています。

なお、本書は『脳はなぜ「心」を作ったのか』(前野隆司著 筑摩書房)と併せて読むと面白いと思います。本書が「知能」の謎に挑んだのに対して、『脳はなぜ……』は「意識」の謎を扱っており、焦点は微妙に違いますが、よく読むとかなり共通する部分があります。

例えば、本書で詳しく述べられている新皮質の階層構造による予測の仕組みについては、『脳はなぜ……』の補論で述べられているフィードバック誤差学習(フィードフォワード、つまり予測モデルとフィードバックを組み合わせた学習モデル)が参考になります。

また、『脳はなぜ……』で展開されている意識について、本書では、宣言的記憶、つまり「思い出して他人に話すことができる記憶」「言葉での表現が可能な記憶」と同じ意味だと主張しています。

どちらの本も構成が明快で読みやすいので、一般の人にもとっつきやすく、読む価値があると思います。


| 宇都出雅巳 | - | 04:12 | comments(2) | trackbacks(0) |
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6年遅れの超遅いレスですいません。

久々に本書を読み直して、自分が6年前に何を書いたかを見に来たときに、コメントに気づきました。

気づくのが遅くてすいません。。。

とはいえ、専門的は話、自分はわかっていないので、コメント返しできないのです。

読まれていかがだったでしょうか?

また、もしここに来られたら、コメント残してもらえるとうれしいです。
| まさ | 2011/06/01 5:23 AM |
うーむ、ニューラルネットワークで
予測もできるんですけどねぇ。
たしかに誤差逆伝播学習で、普通にやると、
予測って感じじゃないですねぇ。。

紹介感謝。読んでみます。

| どら。 | 2005/03/31 7:47 PM |









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