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この対立する世界を突破するには?
あなたへの社会構成主義
あなたへの社会構成主義
ケネス・J.ガーゲン, 東村 知子

私が1年ほど前からはまっているナラティヴ・アプローチ。

今、日本で流行り始めているNLP(神経言語プログラミング)に代わって、家族療法を中心にしたセラピーの分野で注目されている考え方です。

ナラティヴ・アプローチについては、東京学芸大学教授の野口裕二さんが物語としてのケア』でわかりやすく紹介されています。

これまでのセラピスト−クライアントの関係にあった、治す人−治される人という関係そのものを見直す、まさしくパラダイム転換を迫る考え方です。

先日、野口裕二さんとお会いする機会があり、詳しくお話をおうかがいすることができました。まさしく、ナラティヴ・アプローチの考えを体現されている方でした。

本書はその際に、野口さんから紹介された本で、社会構成主義というナラティヴ・アプローチのベースになっている考え方を、一般向けに解説した本です。

翻訳もよくて、ほんと読みやすい本です。かといって、わかりやすいかどうかはわかりません。私たちが当り前に思っている考え方に再考を迫る本だからです。

例えば、セラピーやカウンセリングの大部分に浸透している「医学モデル」。ある人を「病気」とみなすことによって、「治療」という行為を行うモデルです。

しかし、社会構成主義は、これに対して別の可能性を唱えます。もし「病気」と見なさなければ、「治療」以外の行為が動き始めるからです。

少し、本書から引用します。

セラピストの仕事は、人々が報告する問題−抑うつ、暴力、恐怖、無力感など−−の原因を探し出し、それを取り除き、人々を安心させる(治療する)ことです。問題の原因は精神分析ならば「心の深層(抑圧)」に、ロジャース派ならば「自尊心の欠如」に、認知主義の立場ならば「思考の欠陥」にと、さまざまなところに求められます。しかし、いずれにしても、問題は患者あるいはクライアントの心の中にあるとされ、セラピストは専門家としての役割−「中立」を保ち、問題の源を探り、解決に向けて努力する−をただ果たせばよいということになります。

社会構成主義は、医学モデルに立つこのようなセラピーへのアプローチに対して、真正面から挑戦します。なぜ、クライアントは、「問題を抱えている」とみなされなければならないのでしょうか。他にもっとよい道はないのでしょうか。また、それぞれのセラピストは、どういう根拠にもとづいて、「この理解のしかたの方が優れている」などと主張するのでしょうか。本当に中立的なセラピーなど、果たして存在するのでしょうか。


いかがでしょう? ピンときますか?

コーチングでは、「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」という考えをベースにしています。社会構成主義の考えを理解してもらえれば、コーチングにおける考えが、どれだけ大事かがよくわかっていただけるでしょう。

コーチングが一般的になるにつれ、このベースとなる考えがなおざりにされ、質問することや、単に相づちを打って「聴いたふり」をすることまでもがコーチングといわれていますが、私はとても哀しいです。

また、「コーチングとカウンセリングの違いは?」という質問もよくきかれますが、カウンセリング自体が大きく再考をさまられて、ナラティヴ・アプローチのような考えも出ている今では、ほとんど意味がない質問といえます。

コーチングにたずさわる人で、理論的な支えが欲しいと考えている人は、NLP(神経言語プログラミング)や、臨床心理学の理論よりも、まず社会構成主義、もしくはナラティヴ・アプローチを読んでほしいです。

コーチング(特にコーアクティヴ・コーチング)はとても奥深いです。

また、セラピー・カウンセリング、さらにはコーチングの普及に伴って、それに対して「心を商品化する社会」と批判する人々も注目されていますが、その多くが従来型の「医学モデル」に基づくセラピーなどを取り上げて、底の浅い批判をしているのが現実です。ぜひ、社会構成主義、ナラティヴ・アプローチなども踏まえて、論を展開してほしいと思います。

本書はかなり分厚く、私もまだ1回しか読んでいませんが、これから読み込んで、このブログやメルマガで発信していきたいと思います。

いっしょに学んでいきましょう!
| 宇都出雅巳 | 社会学 | 19:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
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