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「偶有性」。これは面白いネタだ!
「脳」整理法
「脳」整理法
茂木 健一郎

「脳」ブームといえるほど、「脳」についての関心が高まっているように思います。この「脳ブーム」の重要な立役者である茂木健一郎さんの新刊が本書です。「クオリア」(これについては茂木さんの本を読んでください)をはじめとして、数多くの「脳」関連本を出されています。

今回の本も「脳」がついてその名も『「脳」整理法』。一世を風靡した野口悠紀雄さんの『超・整理法』をもじったものかもしれまえんが、一見するとビジネスノウハウとでも思えそうなタイトルです。

そもそもこの本を買うきっかけは、母親が見せてくれた茂木さんの新聞のコラムでした。細かい内容は覚えていませんが、

部屋が散らかっていないからといって、頭の中が散らかっているわけではない。他人から散らかっているように見えても、それが散らかっているとは限らない。

そんな内容でした。部屋が本や書類で散らかっている私を思いやってのことだったのでしょう。そのコラムで紹介されていたのが、『「脳」整理法』でした。

茂木さんの本なので、ある程度は期待していましたが、読んでみて期待以上の内容でした。タイトルからは想像もつかないような、生きるうえで、そして私が仕事としているコーチングを考えるうえでも、大変示唆に富んだ内容を含んでいました。これだけでメルマガが10本ぐらい書けそうです。思わず3回も繰り返し読んでしまいました。

この本のキーワードというか、メインとなっている概念はこれにつきます。

「偶有性」(Contingency)

聞き慣れない言葉で、私も初めてでした。意味を説明すると
「半ば偶然に、半ば必然に起こる」
「ある程度は予想がつくが、最終的には何がおきるかわからない」
「完全に予想することはできないが、ある程度の脈絡がある」
「偶然と必然の間の微妙な「あわい」の領域」

なんとなくわかってもらえましたか? 
言葉というものは恐ろしいし、パワフルなものです。この言葉を知っただけでいろいろなことが、まさしく「整理」できます。この「偶有性」は「最近の脳科学において最も重要な概念の一つになりつつある」(本書より)というのですから、世の中まだまだ知らないことが多いし、面白いですね。これだから、本を読むのはやめられません。

茂木さんはこの「偶有性」という言葉を使って、とても本質的なテーマに迫っていきます。

一つは「知」の問題。茂木さんは「世界知」と「生活知」という1つの「知」の関係に目を向けます。

「世界知」とは、私たち人間が住む世界は「このようになっている」という世界観にかかわる知です。一方、「生活知」とは、一人の人間として生きていく中で、いきいきと充実した人生を送るために必要な知恵のことです。

「世界知」とは科学に深くかかわる知です。科学で大事とされているのは確率であり、統計的真理。多くのサンプルから、そこに成り立つ傾向や法則を見つけたものです。「世界知」では、「世界を三人称の立場から全体として見たときの統計的真理を扱」(本書)っています。

これに対して「生活知」とは、「取り替えることのできない自分の人生を生きるための、一人称の真理を扱っている」ものです。

われわれが生きている状況は、完全に規則的でもないけれども、全くのランダムでもない、まさしく「偶有的」な状況です。「世界知」と「生活知」が必ずしも一致することがない状況です。しかし、全く関係がないわけではありません。どこかで深く関係しています。この世界知と生活知を結ぶノード(結節点)となるのが、自分の脳であり、脳を偶有性を扱うものとして生かすことが一番正しいやり方であると茂木さんは主張します。

われわれの脳は、決まったこと繰り返しやって覚えることに使うよりも、偶有性に満ちた生きることを体験し、それを編集し、整理して記憶することに使うことの重要性を説いています。

この「生きる」ことを見ていったときに突き当たるのが、「時間」であり「他者」という存在。

「時間」においては、「世界知」につながる時間を「神の時間」。「生活知」につながる時間を「人間の時間」と名づけて、その2つの時間を見ていきます。

この2つの時間の差異を特徴づけるのが、「今」

hわれわれが生きていく中で意識する時間、つまり「人間の時間」では、「今」には特別な意味があります。生きていくなかで、次の「今」には何が起きるかわかりません。かといって、まったくランダムでもありません。そんな偶有性のなかで、「今」は特別な意味を持ちます。

しかし、「神の時間」では「時刻は無限の過去から未来まですべて等価であって、「今」という時点には何の特権もないのです。」(本書)。こんな「神の時間」も踏まえつつ、われわれは「今」を生きて、「人間の時間」を過ごしているのです。

そして他者。

われわれにとって、他者は偶有的存在です。

他人の言動を常に正確に予測することができるでしょうか? よく知っていると思っている人でも、時には意外な行動をすることがあります。そして一方、その言動が全く予測不可能という人もなかなかいません。これまでのことが何らかの影響を持っているのも事実です。他者とは、半ば規則性を持ち、半ば予想がつかない、まさに偶有的な存在なのです。

こうして人は「時間」「他者」という偶有性に触れ、その中を生きています。その体験を脳は徐々に整理し、それをもとにまた偶有性を生きています。
偶有性との行き交いの中、脳の中で体験が徐々に整理されていくプロセスは、新しいものが生み出されるプロセスとほとんど同義です。脳は、創造的であるために、さまざまな偶有性をもたらしてくれる広い世界との行き交いを必要とします、人間の脳の創造性とは、偶有的な世界に対する、一つの適応であるとさえいえるのです。

ここに紹介したのはほんの一部です。そのほか、人間の身体の感覚、コントロール、占い、科学などなど、新書ながら盛りだくさんの内容です。

ぜひぜひ購入して繰り返し読まれることをお勧めします。
| 宇都出雅巳 | コーチング | 10:35 | comments(2) | - |
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ショウコさん

 5年以上遅れての超亀レスで失礼します。

 『心を生み出す脳のシステム』を読まれてどうでしたか?

 「私」というミステリーを解くヒントが見つかったでしょうか?

まさ
| まさ | 2011/04/05 12:18 PM |
マサさん、こんにちは。ショウコです。

さすが、ブックセンターと名づけてらっしゃるだけありますねー。すごく濃いレビュー!
大型書店も、このマサさんのレビューみたいに店員さんのコメントを書いたPOPつくってほしい。(タワレコとかでやってるみたいに)

ちなみに私も先日茂木さんの「心を生み出す脳のシステム」
を購入しました。サブタイトルの“「私」というミステリー”がナルシストな私の脳にヒットしたんですね、きっと(笑)
| ショウコ | 2005/10/19 4:34 PM |









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