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哲学と自然科学の関連を軸に近代哲学を知る
対話・心の哲学―京都より愛をこめて
対話・心の哲学―京都より愛をこめて
冨田 恭彦

ここ最近、脳の研究やそれに伴う「意識」の研究の本などをよく読む中で、哲学への関心がだんだんと高まってきています。とはいえ、哲学にはこれまでとんと馴染みがなく、哲学の本を読もうとしてもその難解さにお手上げ状態でした。そんななか、徐々に新書を中心に読み始めています。昔、新書といえば、岩波新書、中公新書、そして講談社現代新書ぐらいでしたが、いまではいろいろな会社が新書を出しており、哲学の解説書もたくさん出ています。

今回読んだ本書は、対話形式で進めている「読みやすそうな」哲学の解説書だったので、買ってみました。「読みやすそう」でも実際に読みやすいとは限りませんが、この本はほんと読みやすい本でした。

本のテーマは、デカルトやロックなどの「観念」を重視する心の哲学について、その変遷とともに、それらがどのように自然科学の影響を受けていたかを明らかにしていくことです。

デカルトであれば「我思うゆえに我あり」という言葉が有名ですが、「で、それが何なの?」というのをあまり理解していませんでした。それを丁寧に解説してくれます。また、その哲学の背景にある当時の自然科学の状況、考えとともに解説されるので、より身近なものに感じられます。

デカルトの時代は古代の原子論が復活した時代でした。それは物には形や大きさなどの量的な性質しかないという考え方です。色、熱さ・冷たさといったものは物の性質ではないと考えるんです。じゃあ、日常、われわれが五感によってとらえて、物体の性質だと考えているものは何? といったときに、それを心の中に位置づけなおし「観念」と呼んだわけです。

さらに進んでロックの場合は、物は心に現れず、物に代わって観念が心に現れ、その観念が物を表すととらえます。(これは「知覚表象説」と呼ばれます。)

この背景にある自然科学の考えが、当時、原子論を継承する形で出てきていた「粒子仮説」と呼ばれるものだったといいます。形や大きさは持つけれども、色・味・熱さ・冷たさなどはもたない「粒子」が真空のなかに存在しているという考え方です。

ロックが言うところの、直接知覚されない「物そのもの」というのは、粒子仮説における「物」なんです。ロックは、物が持っている形や大きさなどの性質を「一次性質」と呼び、「物」というのはこの「一次性質」だけを持ち、それが小さいために知覚できない「粒子」だと考えるわけです。

そうすると、デカルトの場合と同じように「じゃあ、われわれが日常とらえている色とか熱さなどはどうなるの?」と思いますよね。それをロックは、物にはわれわれの心に色や味、熱さ・冷たさなどを感じさせる「能力」があると考えました。そして、その能力のことを「二次性質」と呼びました。

デカルト、ロックの背景にある自然科学の考え方、そして「観念」というものがなぜ出てきたかがわかってもらえたでしょうか? デカルトにしても、ロックにしても、高校のころに習っているはずですが、ただ名前とその考えのキーワードぐらいしか覚えていませんよね。こうやって、言われると少しは身近なものになるのではないでしょうか? 

とりわけ、最近では脳の研究が進んできて、その研究成果との対比から、人がどのように物を知覚しているか、意識しているかについて考えさせられる機会が多くなっています。哲学を志している人には申し訳ありませんが、哲学なんてどこか暇な人が考えることと思われてきたかもしれません。でも、こうやって考えていくと、まさにわれわれが生きている基盤を考えていくもの、生きているそのものについて考えているということを思います。

ここで紹介したのは、本書の一部に過ぎません。デカルトに関してはその考え方に対する批判を取り上げながら、さらに立体的にデカルトの考えが持つ問題点を明らかにしていきます。そしてさらにカントの考え方も検討し、批判を加えていきます。

そしてそもそも、デカルト、ロック、さらには現象学のフッサールにつながる「基礎づけ主義」についての再考をうながしていきます。「基礎づけ主義」とは、「私たちの考えは絶対に確かな知識に基づいていなければならないとか、私たちの思考が健全であることの絶対的保証が与えられていなければならない」とする考え方です。言葉を換えていうと、絶対的真理や本質を求めようとする考え方です。著者はリチャード・ローティの「自分化中心主義」を紹介し、この「基礎づけ主義」の持つ限界と危険性を指摘していきます。

そこではさらにわれわれの考え方、生き方を考えさせらます。私のように哲学と縁遠い人にはとても助けになる本だと思います。

最近、アフォーダンス、直接知覚論で知られるギブソンの本をまた読み始めていたときなので、そこともつながるような気がしていて楽しみです。コーチングにももろに結びつきそうな気がします。これだから、いろいろと本を読んで考えるのはやめられません。

本書は著者の三部作の最後に位置づけられているというので、ほかの2冊も読んでみようと思います。
| 宇都出雅巳 | 哲学 | 16:31 | comments(0) | - |
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