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このままでは人間がコンピュータの奴隷になる!
情報学的転回―IT社会のゆくえ
情報学的転回―IT社会のゆくえ
西垣 通

コンピュータ、情報、コミュニケーションなどを切り口に、文系と理系の狭間で刺激的な本を出し続けている西垣通・東京大学大学院情報学環教授の“語りおろし”作品。気軽に西垣・情報学に触れることができる本です。

タイトルの「情報学的転回」とは、20世紀に起きた「言語学転回」に続く21世紀の転回として著者は位置づけています。

「言語学的転回」とは構造主義言語学をうちたてた言語学者ソシュールに始まり、構造主義人類学者・レヴィ=ストロースによって確立したもので、「端的には、事物の存在についての思索自体よりその言語表現を重視せよ、ということ」。それは「人間(主体)から言語へ」「歴史から構造へ」「実体から関係へ」といった変化で表されます。これは、白人によるヨーロッパ文化がもっとも進歩した文化であるという見方を否定し、有色人を解放する思考をもたらしました。

そして「情報学的転回」においては、人間が「生物の一種」であると認めることから始まり、言語学転回が有色人を含めた人間尊重につながったのに対し、あらゆる生命の尊重をめざすと著者はいいます。

「情報」というと多くの人がコンピュータやインターネットなどのITやデジタルデータを思い浮かべるでしょうから、「生命の尊重」とどうつながるのかわからないかもしれません。一般には、コンピュータやインターネットなどで、情報の共有化が進んだり、より生活・仕事が便利になるなかで、何か大きな変化が起こるというぐらいにしか考えていないでしょう。

著者が言う「情報学転回」とはそんな表面的なことではなく、もっと根源的なところからの主張です。そのためには「情報」についてもう一度とらえなおす必要があります。これについては、著者の『こころの情報学』(ちくま新書)・『基礎情報学』(NTT出版)で詳しく解説されていますが、「情報」とは「生物にとっての意味作用」、つまり生物にとって意味のあるもの、重要なもの、価値があるものととらえるところから始まります。デジタル情報もその延長線上にあります。

本来であればITは人間がよりよく生きる、生命力を活性化するために用いられるものです。しかし、実際にはITの普及・発展のなかで、人間をロボット化するために用いられているというのが、著者の問題意識です。そして、このIT社会・IT文明について考えるうちに、「聖性」(宗教的な霊性)と情報とのかかわりにぶち当たります。

著者は現代のIT文明はユダヤ=キリスト教の世界観と密接なかかわりがあるといいます。その世界観とは、「宇宙すべてが神の言葉にしたがって普遍論理的にできている」という考えであり、そこを直視して脱出しないと、ITによる無制限な効率競争や人間のロボット化は避けられないと警告します。

そのために「情報学的転回」が必要であり、これは「人間がコンピュータの奴隷になることへの異議申し立て」といいます。そのためにユダヤ=キリスト教的思想に対抗するものとして、著者は古代インド哲学を挙げ、オートポイエーシスの考えも引用しながら、そこに新しい可能性を見出そうとしています。

文系と理系の両方の知にまたがりながら展開する、著者ならではのダイナミックな議論が、大きな刺激を与え、現代社会、そして自分自身について深く考えさせられます。21世紀を生きるわれわれにとって、必読の書といえるでしょう。
| 宇都出雅巳 | 社会学 | 18:28 | comments(0) | - |
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