宇都出ブックセンター

本が大好きな宇都出雅巳(まさ)が、本の紹介をしています。
<< Web20で本当にわれわれは賢くなるのか? 幸せになるのか? | main | この本を読んだら、「趣味:読書」と書くのには勇気がいるでしょう。 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
なんともさわやかな対談です
君自身に還れ―知と信を巡る対話
君自身に還れ―知と信を巡る対話
池田 晶子,大峯 顯

とてもさわやかな読後感が残る対談でした。

内容はもちろんですが、大峯さんと池田さんのやりとりが、なんともさわやかで面白いんです。

池田さんは分かりやすい言葉で、しかも鋭く本質を突きながら独自の哲学本の領域を開いた人。その死後も人気は衰えていません。私も池田さんの対談ということに引かれて、本書を購入しました。正直言いまして、対談相手の大峯さんのことは何も知りませんでした。しかし、結果的に私が引かれたのはむしろ大峯さんのほうでした。


本書でも、池田さんはいつものように本質をズバズバと突いてくるのですが、相手の大峯さんがしっかりと受け止めつつ、あるところは強く、あるところはやさしく答えている姿に、なんともうれしくなりました。

池田さんは、ある殺人事件を起こした少年の記事を読んで、「理解不能な人間が出てきた」と嘆きますが、大峯さんは「人間はいつも人間の枠をはみ出しているわけですよ」とあっさり言ってのけてしまう。また、池田さんが宗教教団の問題点を指摘し、釈迦がそもそも真理を伝えなければよかったのではないかと言うと、「ほんとうに知ったら、どうしても言いたいというところへ、言わざるを得ないというところまで行くはずです。」とドンと構えて答える。

あの池田さんがまるで血気盛んな少女のように思えるほどです。あとがきでも池田さん自身が、「哲学の先輩であるだけではなく、人生の先達として、やっぱりまだまだかなわないなあ」と書いています。

久々に歳を取ることの意味、大事さを思わせてくれた本でした。

内容としては、まず、言葉の持つ力。

ただし、「言葉」といってもいわゆる彼れが使っている「言葉」は通常のそれとは違いますね。
「本当のリアリティに触れた言葉」「真実の事柄を語っている言葉」「石のように動かない」
といった表現が使われています。

そして、人間というもの。生きていることが当たり前になった現代には、生のリアリティがなくなったといいます。
「死ぬことが当たり前であって生きていることが不思議」
と「死」という言葉が何度も繰り返されます。
「哲学というのは平生から死ぬことを練習することです」「どんなにのんきな人、要領よく人生をやってきた人間でも、自分の死だけはごまかせない」「死の自覚があってはじめて死を超えることができる」
この先に見えてくるのは善悪もない世界です。大峯さんはこう言い切ります。
「仏さまは衆生の善悪を問わない。善いものも悪いものも救う。善とか悪とかは人間の意識だけにある」

最後は真理。信じることから、覚りについて、真理を伝えることについて、そして仏教と科学やキリスト教の関係にまで話はおよんでいきます。二人が一致して強調しているのは「空」。
池田 やはり根っこに持っているべきだなと思うのは、空なんです。すべてを空に帰すという、そういうものの見方の中で人間に起こってくることがらを見ていけば、何かにしがみついて実体化するということはなくなるんじゃないでしょうか。」

大峯 空というのは無限大の開けのことなんですよ。存在の限りない開けです。いかなるものをも排除することのない無限の解放空間のことを、空というわけです。」


かなり生きることの本質に触れた抽象度の高い話なのですが、とてもわかりやすいのが不思議です。コーチングに引き寄せて考えると、「なるほど」と思う言葉も数多くありました。

最後に、読者の皆さんも関心があるだろう「幸せ」についての言葉を引用して終わりにしましょう。大峯さんの言葉です。
「幸せっていうものは求めるものじゃないんだな。「幸せっていったい何だろうか」と考える人が幸せになっていくんですね。」

| 宇都出雅巳 | 哲学 | 00:17 | comments(0) | - |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 00:17 | - | - |









+ LINKS